マイカーを所有している人にとって大きな負担となる車検代。2年に1度のペースで受けなければいけないので、費用を抑えられるならそれに越したことはありません。
そんな節約派の方から注目を集めているのが、自分で運輸支局などにマイカーを持ち込んで継続検査を受けるユーザー車検です。
車検というとディーラーや整備業者などプロの手に委ねるのが一般的ですが、実は自分で車検を通すことも可能なのです。
実際、車検のコストを抑えるためにユーザー車検を受ける人は増えており、ユーザー車検マニュアルなども書籍で販売されているほどです。
ただ、ユーザー車検にはメリットがある反面、いくつかのデメリットもありますので、内容をよく理解してからユーザー車検を行うかどうか決めるようにしましょう。
ユーザー車検を受ける3つのメリット
ユーザー車検を受けるメリットを3つご紹介します。
メリット1.費用を抑えられる
ユーザー車検の最大のメリットはなんといっても車検代を安く抑えられるところです。
車検代は大きく分けて車検基本料と法定費用の2つにわかれています。
【法定費用】 自賠責保険料や重量税、印紙代などです。車種によって固定されているため、ディーラーなどの業者に依頼してもユーザー車検を受けても一律同じ額を支払う必要があります。普通車ではおよそ5万円弱となることが多いようです。
【車検基本料】 車検代行手数料や検査代、点検費用などです。こちらは業者によって価格が異なりますが、普通車なら合わせて5万円程度がかかります。
ユーザー車検なら整備は自分で行うので、点検費用は無料になりますし、車検代行手数料も書類代のみなのでほとんどお金がかかりません。
車検基本料をほぼ丸ごと浮かせられるのがユーザー車検ならではのメリットといえるでしょう。
メリット2.車に詳しくなれる
自分で愛車の点検や整備を行うと、自然と車に関する知識や技術を習得できるようになります。
すると車検の時だけでなく、日常で車を利用していて「ちょっと調子が悪いかな?」と思った時にもある程度セルフメンテナンスできるようになります。
また、不具合などにもいち早く気付けるようになるので、大がかりな故障を未然に防ぐことも可能となります。
一般的にはこうした不具合やメンテナンスはディーラーや整備業者などに持ち込むことが多いのですが、そのぶんお金がかかりますし、タイミングによってはすぐに修理してもらえないことも。
末長く車と付き合っていくつもりなら、車に関する知識や技術を身につけることは大きな財産になるでしょう。
メリット3.好きなタイミングで車検を受けられる
車検の満了日は車によって異なるので、一年通して「閑散期」というものはありません。
そのため、ディーラーや整備業者で車検の予約を取ろうと思っても、希望の日にちや時間帯が埋まってしまっていることも。
一方、ユーザー車検なら自分で陸運局に持ち込めばいいので、自分のスケジュールに合わせて車検を受けられるところがうれしいポイントです。
ただ、実際には「いつでも好きな時に」持ち込めるわけではないので要注意。その点については以下のデメリットの項目でくわしく説明します。
ユーザー車検を受ける時に注意したい4つのデメリット
車検代を抑えたい方にとってメリットの大きいユーザー車検ですが、一方でこんなデメリットもあります。
デメリット1.時間と手間がかかる
ユーザー車検では自ら愛車を運輸支局等に持ち込んで検査を受けることになりますが、かなりの時間と手間がかかることを覚悟しておかなければなりません。
まずマイカーの持込ですが、あちこちに点在しているディーラーや整備業者、ガソリンスタンドなどとは異なり、運輸支局の数は極めて少数。
首都圏以外では基本的に1つの都府県に1~2つしか設置されていないため、場合によっては車両の持込だけでも相当な時間がかかります。
車両の持込を済ませた後の検査の流れは以下のとおりです。
- 自動車検査票など必要な書類を作成する
- 自動車重量税などを支払う
- 自賠責保険の継続加入手続きを行う
- 納税確認を行う
- 車検の受付を済ませる
- 検査コースで受検する
- 車検証が交付される
これ以外に、予備検査場で最終調整を行う場合もあります。
検査コースに通すだけなら30分程度で済むこともありますが、混雑しているとかなり待たされることになるので、時間に余裕のある時でないとユーザー車検を受けるのは難しいといえるでしょう。
デメリット2.受検できる曜日に制限がある
運輸支局の業務時間は平日の9:00~16:00まで(間に昼休憩はさむ)となっており、土日祝日および年末年始は休業となっています。
つまりユーザー車検は平日日中にしか受けられないため、土日休みの方は利用しにくいのが実状です。
デメリット3.整備に不安が残る
かつて日本ではユーザー車検を受ける前に定期点検を実施することが義務づけられていました。
しかし1995年の車両法改定にともない、車検と定期点検整備が完全分離化されたことで、定期点検の実施時期は車検の前後どちらでも可というルールが追加されました。
この法改正がユーザー車検ブームに火をつけたわけですが、規制が緩和されたぶん、リスクもやや大きくなっています。
極端な話、法改正後は車検時点での安全・環境基準さえクリアしていれば合格になってしまうため、点検整備が不十分になるおそれがあるのです。
そのため、ユーザー車検を受ける場合は日頃の定期点検や不具合箇所の修理など、保安基準に適合する状態を維持できるよう努めることが必須といえます。
デメリット4.追加費用がかかる
ディーラーなどの業者に車検を依頼した場合、同時に24ヶ月点検整備を行うのが一般的なので、車検基本料にその費用も含まれています。
一方、ユーザー車検の検査コースには24ヶ月点検は含まれないため、自身で別途手配しなければなりません。
法改正により、そのタイミングは車検の前後どちらでも良くなりましたが、24ヶ月点検を受けることは法律で決まっているため、いずれにしても点検費用が追加でかかることになります。
また、整備不良などによってユーザー車検に合格できなかった場合は再度調整が必要となります。
その場合、追加で費用がかかるのはもちろん、また日を改めてユーザー車検を受けに来なければいけないため、二度手間になってしまうのがネックです。
安心・安全を求めるならプロに任せよう
ユーザー車検は車に関する知識や技術をある程度持っている人であれば、車検代を節約できるお得な手段といえます。
しかし運輸支局が近場にない人は車両を持ち込むだけでも大変ですし、平日日中しか営業していないので、通常平日日中に勤務している方は都合をつけるのは困難です。
また、車の知識・技術が少ないユーザーの場合はメンテナンスや整備の不安も残ります。効率的に車検を通し、車を安全に使いたいのならプロの手に任せたほうが安心でしょう。