車検で比較的よく見かける整備内容として、ブレーキフルード(ブレーキオイル)があります。 聞いたことはあるけど、実際にどのような役割なのかご存知ない方も多いのではないでしょうか。 今回はブレーキフルードの役割と、交換時期・交換にかかる費用の相場について解説します。
ブレーキフルードとは?
ブレーキフルードとは、ブレーキペダルを踏んだ力(圧力)を各ブレーキに伝える役割をもつ液体のことです。 別名でブレーキオイルとも言われています。 吸湿性があり、長期間使用していると水分を含んで劣化していきます。 劣化すると、ブレーキの効きが悪くなるため定期的な交換が必須となる重要な部品です。
ブレーキフルードの交換時期
ブレーキフルードの交換時期は初回(新車)であれば3年、2回目以降は2年ごとの交換がメーカーで推奨されています。 車検業者によっては、4年ごとを目安に交換する場合もあります。
車に乗る機会がそれほど多くない場合であれば、4年に1回でも大きな問題になることはありませんが、 ブレーキフルードは例え、車を動かさない状態でも徐々に劣化していき、ブレーキ性能が徐々に低下していきます。 ドライバーの安全を守る上で重要な役割を担っているため、基本的にはメーカー推奨である2年ごとの交換が望ましいと言えます。
交換にかかる費用の目安
依頼した業者やブレーキフルードの質にもよりますが 一般的には4,000~5,000円前後が平均的な相場です。
以下は当サイトに寄せられたアンケートから抜粋した、ブレーキフルード交換にかかった費用の一例です。 原則としてディーラーに依頼すると費用が高くなる傾向があります。
ブレーキフルード交換費用の事例
業者 | 費用 | 内訳 | |
---|---|---|---|
事例1 | カーディーラーA | 6,618円 | 工賃 4,800円/部品台:1,818円 |
事例2 | カーディーラーB | 6,339円 | 工賃 4,320円/部品台:2,019円 |
事例3 | ガソリンスタンド | 4,800円 | 工賃 3,500円/部品台:1,300円 |
事例4 | 中古車販売会社 | 3,500円 | 工賃 2,000円/部品台:1,500円 |
事例5 | 車検専門店 | 4,000円 | 工賃 3,000円/部品台:1,000円 |
ブレーキフルードの規格
ブレーキフルードには、DOT (ドット:Department of Transportation=米国運輸省)という規格が存在します。 (日本でいうJIS規格と似たようなもの)
その規格の中で、DOT3・DOT4・DOT5いったランクがあり、数字が大きくなるほど沸点が高くなります。ただし、単純に数値が高ければ高性能というわけでなく、それぞれの規格により用途が区分けされています。 通常の車両であればDOT3~DOT4が利用され、DOT5はスポーツ走行や寒冷地での用途として利用されるのが一般的です。
ランク | スペック | |
---|---|---|
DOT3 | JIS3種 BF-3 | ドライ沸点205℃以上 ウエット沸点140℃以上 |
DOT4 | JIS4種 BF-4 | ドライ沸点230℃以上 ウエット沸点155℃以上 |
DOT5 | JIS5種 BF-5 | ドライ沸点260℃以上 ウエット沸点180℃以上 |
ブレーキフルードの劣化による危険性
ブレーキフルードが劣化すると沸点が低くなり、ブレーキ時の摩擦熱により沸騰、気泡が発生する場合があります。 気泡が発生するとブレーキの圧力の伝達効率が大きく低下し、最悪の場合ブレーキがまったく効かなくなる危険な状態に陥ります。 これを「ベーパーロック現象」といいます。 この状態を防ぐためにもブレーキフルードの性能は沸点の高さ(沸騰しにくさ)が重要となります。
また、ベーパーロック現象は、長い下り坂でのブレーキの使用過多により、発生するリスクが高くなります。 長い下り坂での運転では、あらかじめ速度を落としておく、低めのギアでエンジンブレーキ・排気ブレーキを利用するなどで速度を抑制することが効果的な予防になります。 一番の予防は前述したとおり、適切な交換時期に交換することです。
昔と比較してブレーキの性能は格段に向上し、このようなトラブルに見舞われることは格段にすくなくなったとも言われていますが発生しないなどということはありえません。 重大な事故に見舞われるリスクを避けるために、ブレーキフルードの適切な交換と、適切な運転を心掛けることが重要だといえます。