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2019-02-09 11:12:03
整備

発煙筒の期限切れ、車検は通らない?

自動車に備え付けられた発煙筒。 ほとんどの方は使った経験はなくても、その用途についてある程度理解されているかと思います。

そして、発煙筒には有効期限が存在し、車検時には期限切れを理由に交換を勧められる事があります。 普段使う機会がないからこそ、「ほんとうに必要なの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。 今回は、発煙筒の役割や交換の目安・法律上のルールなど詳しく説明いたします。

期限切れの場合は必ず交換しないといけないのか?

まずは気になるこの点から。 結論から言うと期限切れでも車検には全く問題ありません。

車検に合格する基準となる「道路運送車両法」の保安基準において、 発炎筒は「非常信号用具」と定義された上で、以下の様に記載されています。

(非常信号用具) 第四十三条の二 自動車には、非常時に灯光を発することにより他の交通に警告することができ、かつ、安全な運行を妨げないものとして、灯光の色、明るさ、備付け場所等に関し告示で定める基準に適合する非常信号用具を備えなければならない。ただし、二輪自動車、側車付二輪自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車及び被牽けん引自動車にあつては、この限りでない。

備えなければならない」とある通り、発煙筒の設置自体は義務付けられています。 つぎに、「告示で定める基準」ですが「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」にて以下の様に定義されています。(一部要約しています)

  1. 夜間、200mの距離から確認できる赤色の光を発するもの
  2. 自発光式であること
  3. 使用に便利な場所に備えられており、容易に取り外しが可能であること
  4. 振動・衝撃等により、損傷や誤作動を起こすものでないこと
  5. JIS 「自動車用緊急保安炎筒」の規格と同程度以上の性能を有すること
  6. 損傷や吸湿による著しい性能の低下などが無いこと

実際はもう少し細かく書かれていますが、大まかには上記のようなことが書かれています。 性能については記載がありますが、有効期限については指定がありません。 有効期限切れが直ちに著しい性能の低下を招くとは言えず、大きな損傷など見られなければ 設置されていればよいという見方が一般的です。

ただし、実際のところは検査員によっては判断が分かれるケースもあり 有効期限切れでは車検を通せないと指摘されることもあるようです。 交換が義務でない以上、断ってもよいのですが 有効期限切れによっていざという時に使えない!ということがあっては大変ですので 可能であれば有効期限ごとに交換することをお薦めいたします。

交換にかかる費用の目安

車検業者に依頼した場合、発炎筒の交換はおおよそ800~1,000円程度が平均的な価格です。

業者品目費用
事例1カーディーラーフュージイ(発煙筒)取替1,652円
事例2カー用品販売店発煙筒646円
事例3車検専門店発煙筒(部品代)1,000円

コストを抑えるのであれば、ホームセンターやネットショップなど購入して予め自分で交換するのも一つの手段です。 その際には、後述する「LED式発煙筒」や「多機能発煙筒」もコストパフォーマンスの点から検討する価値があります。

発炎筒の役割とは

長々と期限切れについてお話しましたが、そもそも発煙筒にはどのような用途があるのでしょうか 教習所で習う内容ではありますが、ここで少しおさらいです。

発煙筒は緊急時、道路に停車した場合に、後続車に対して前方に障害があることを伝える役割があります。 このため発煙筒は自動車のすぐ後ろではなく、50m以上後方に(見通しが悪い場合は、さらに後方)置く必要があります。 使用すると赤い炎(光)を放ちます。 逆に言えば、道路上に赤い光を放つ発煙筒を見かけた場合は、この先になんらかのトラブルで停止した車両などがあると言えるので 見かけた場合は、前方を警戒して無理の無い範囲で速度を落とすことが好ましいです。

LEDや工具付き多機能タイプも!さまざまな発煙筒

発煙筒といえば使い切りで炎を出す火薬式タイプが主流ですが、最近では様々なタイプの発煙筒が出てきています。ここでその一部を紹介します。

LED発煙筒

乾電池を入れて使用するタイプの発炎筒で、厳密にいえば発「炎」筒ではないのですが、代替品として利用が許可されています。 一般的な発炎筒のデメリットとして 1. 有効期限が存在する 2. 発炎時間は5分~15分程度 1. 1回限りの使い切り 1. 煙が視界を悪くするためトンネルでの使用不可 1. 雨などの悪天候下では発炎しにくい場合がある

などが挙げられますが、LEDタイプであれば上記のデメリットをカバーしており

  1. 有効期限なし(ただし電池の有効期限には注意が必要)
  2. 10時間~20時間の連続点灯が可能
  3. 電池を入れ替えれば何度でも利用可能
  4. トンネル内での利用可能
  5. 悪天候下でも問題なく利用可能

といった特徴があります。

1本あたりの価格は通常の発炎筒よりもやや割高ですが 定期的な交換の必要がないことを考えれば、長い目でみればコストパフォーマンスに優れた商品だと言えます。

ただし、電池の残量については定期的にチェックする必要があることと 特に昼間の利用については火薬式のほうが視認性が優れている、というデメリットがある点は注意が必要です。 もちろんLEDの性能も年々進化していますので、視認性の点はいずれ解消されるかもしれません。

多機能 発炎筒

LEDタイプの発煙筒の特徴に加えて、様々な機能が備わった多機能タイプ発煙筒です。 製品により機能は異なりますが、以下のような機能が備わった発煙筒が発売されています。

  1. 緊急時に少ない力でガラスを割ることができる窓割りハンマー機能
  2. シートベルトを簡単にカットできるシートベルトカッター機能
  3. 大音量の警報で周囲に助けを求めることができるSOS機能
  4. 夜間の探しものなどにも利用できる懐中電灯機能

価格帯としては発炎筒・LED発炎筒と比較してもう少し割高になりますが 緊急時・災害史の備えてとしては役立つ機能ですので、購入する価値は十分あるでしょう。

最後に

通常は利用する機会がない発炎筒。交換費用がかかることに抵抗がある方もいるかもしれません。 ですが、万が一の事態で使えないとなると最悪の場合、二次災害を招く原因に繋がることもあります。 いざという時の備えとして、発炎筒はしっかりと交換しておくことをおすすめします。

補足

道路運送車両の保安基準の細目を定める告示〈第一節〉第 64 条の内容は以下の通り 2018年12月21日時点での情報となり、今後改訂される可能性もありますのでご注意ください

(非常信号用具) 第 64 条 非常信号用具の灯光の色、明るさ、備付け場所等に関し、保安基準第 43 条の2第1項の告示で定める基準は、次の各号に掲げる基準とする。 一 夜間 200m の距離から確認できる赤色の灯光を発するものであること。 二 自発光式のものであること。 三 使用に便利な場所に備えられたものであること。この場合において、次に掲げるものは、この基準に適合しないものとする。 イ 運転者席又は運転者の乗降口において直接確認できない箇所(ドアポケット、グローブボックス等であって、他の物品の収納等により直接確認できなくなるおそれのある箇所を含む。)に備えられたもの(運転者に当該箇所を認知させるためのラベルの貼付等の措置が講じられている場合は除く。) ロ 容易に取り外しができないもの 四 振動、衝撃等により、損傷を生じ、又は作動するものでないこと。

2 次の各号に掲げるものは、前項の基準に適合しないものとする。 一 赤色灯火の発光部のレンズの直径が 35mm 未満の赤色合図灯 二 豆電球 2.5V・0.3A の規格又はこれと同程度以上の規格の性能を有しない電球を使 用した赤色合図灯 三 JIS C8501「マンガン電池」の R14P(いわゆるマンガン単二形乾電池)の規格若しくは JIS C8511「アルカリ一次電池」の LR 6(いわゆるアルカリ・マンガン単三電池)の規格又はこれらと同程度以上の規格の性能を有しない電池を使用した赤色合図灯 四 灯器が損傷し、若しくはレンズ面が著しく汚損し、又は電池が消耗したことにより性能の著しく低下した赤色合図灯 五 JIS D5711「自動車用緊急保安炎筒」の規格又はこれと同程度以上の規格の性能を有しない発炎筒 六 損傷し、又は湿気を吸収したため、性能の著しく低下した発炎筒